かわいいとおいしい

そのために生きている

母の公演を観にいく

「母のミュージカルを観に実家に帰ります」そんな面白いことを言える人生であることを、改めて誇りに思う夜。

母が表舞台が好きな人であることはわかっていた。もともとスポーツ万能で委員長タイプだった母は学生時代に本当にやりたかったことをできず、体育会系を全うしたことを悔いているようだった。私は逆に吹奏楽、放送、音楽、美術と母ができたこととは真逆の文化系人生を歩んできたので、少し羨ましそうにされるのも不思議なものだった。母は私にないものをたくさん持っている人なのに。

そんな母が数年前に地元のコミュニティラジオのMCをはじめた。思えばそこから数年の経験が、着実に今につながっている、いや、つなげているのだなぁと思う。数年続いたラジオが終わり、次に母が踏み込んだのはミュージカルの世界だった。かねてより「60歳を過ぎたらアイドルとしてデビューする」と言っている彼女の言葉がやや説得力を帯びてきたのを感じた。

はじめてのミュージカルは1年間の稽古の末、無事に今年の1月に行われ、やや複雑な気持ちで見に言った娘の私は、舞台上の母の姿になんともいえない感情を覚えて号泣した。母が私の母でよかった、そう心から思ったのだ。

前回の公演では母が出てくるたびに母が気になってしまい、舞台も感動したのだが、母の印象が勝ってしまっていた。しかし今日はわりと落ち着いて舞台を観ることができ、母もアンサンブルの一員として私の中の舞台にすっと溶け込んでいた。これはこれで、素晴らしいことだ。

母のエネルギーにはいつも驚かされるが、素直に素敵だと思えるようになった今の自分も褒めてあげたい。私は本当に家族が好きだなと、改めて思った夜だった。