かわいいとおいしい

そのために生きている

前歯からくる異変

私は虫歯になったことがない。しかしわかかりし頃のかわいい過ちが原因で右の前歯(上)がパッキリ折れて、差し歯である。

前歯を折ったのは小学3年生のお正月だったが、差し歯にしたのは実家を出た7年前である。それまでは折れた歯を強力な接着剤のようなものでつけている状態だった。もちろん歯医者で施工されている。歯科技工士の父と歯科衛生士の資格を持つ母が旅立つ娘(私)に今後はいつその歯が取れてもいいようにと、いっそ差し歯にしてはどうかと打診され、よくわからないまま差し歯をつくり、上京した。

ちなみにそもそもどうして前歯を折ったのかというと、小学3年生のお正月、デパートに初売りに連れていってもらった私は当時まだいわゆるプリクラではない概念のプリント倶楽部を一人で撮影したかった。絵のような枠に入るタイプのそれで、今だと観光地ぐらいにしかない趣深い元祖プリント倶楽部である。その機械はレバーで操作できるようになっており、私は勢い余ってそのレバーに強打したというわけである。

「折れた」そう思った私はとりあえず折れた歯を拾い、そっと母親に差し出したような記憶がある。怒られか心配されたかも覚えていないが、父が歯科技工士ということもあり取引先の歯医者(休診)に連れていってもらい、「三が日もだれかくるだろうと思ってはいたがまさかおたくとは」と言われたことだけ鮮明に覚えている。

そこから例の接着剤生活が始まるのだが、これがまぁ厄介で、結構定期的にとれるのだ。キャッチャーをしていてボールが顔に当たるという夢から起きたら歯が取れていた、ということもあった。それだけでなく私を苦しめたのは、結局この時点ではくっつけた葉の部分は神経が丸出しになっており、熱いものや冷たいものを食べると痛くてたまらないことだった。これはのちに残っている歯の神経を抜くことで解決された。

そういうわけでさすがに上京する際にはこんなことにならないで済むようにと、両親から差し歯を贈られるわけである。ちなみに実家にいるときに連れていかれる歯医者は基本的に父の取引先で、父も母も歯のプロであることもあって、私のレントゲン写真を見ながらの説明はすべて専門用語でのやり取りで、本当にさっぱりわからなかった。本人がわからないのに良いのだろうかと思ったものである。

そして親元を離れてからは特に歯に異常もなく……というわけにいかず、ときたま前歯付近がデリケートになり、熱いものがしみる(神経は通っていないので、どういう状態なのか自分でもよくわからない)ようなときがあり、何度か病院にも通った。どうやら神経の詰め物が悪さをしているようで、とりあえず歯磨きとデンタルフロスを勧められた。25歳、虫歯経験なし、父歯科技工士、母元歯科衛生士で言われる「歯磨きをきちんとしろ」は正直しんどい。

しかしまぁはじめてデンタルフロスをした快感は忘れられず、夫がリステリンスキーであることも幸いして、ときたま歯磨きブームが訪れる。まぁ結局フロスから脱落していくわけだけど。

今日も前歯からくる異変を察知して丹念にフロスを行なった。明日からは父母のいる実家へ帰る。なんとなくルーツを思い出しながらフロスを行なった夜だった。